全般

私に合うお薬は他人にも合うとは限らないというお話

 

※オーダーメイド医療(各個人の薬物動態遺伝子をもとにお薬の選択や量をそれぞれの匙加減で調節していくこと)が一部の医療で将来実現するかもですね。
※実は、最近になってお薬の添付文書にも、ようやく患者の遺伝子多型に言及した記載がちらほら見られるようになりました。(2013年4月時点)

話は少し難しくなりますが、お薬の飲み合わせやお薬と食品などの相互作用で臨床上問題となるものは、そのお薬がお口などから体内に入った後の代謝過程(消化管吸収→代謝→分布→排泄)での相互作用です。

特に代謝過程での体の中に元から備わっている「薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)(お薬の解毒又は活性化をする酵素:体内での化学反応を促進する蛋白質)が相互作用に深く関与しております。

お薬は、その後肝臓でグルタチオン・グルクロン酸・硫酸などで抱合体を作り解毒されます。

また、細胞膜での薬物通過に関連する「P-糖タンパク(PGP)(代謝されたお薬を排泄する運び屋さんのこと:トランスポーター)」が阻害されると、目的とするお薬の効果が強く出たりします。

逆に、薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)が誘導(肝細胞で代謝酵素がより多く産生されること)されてそれらの機能が亢進してしまうと、目的とする効果が減弱してしまいます。(代謝されて効果を発揮するようなプロドラックは例外です。)

生体機能を維持するためには細胞内に入ってきた物質を、細胞質内から管腔側へ積極的に排泄する必要があります。でなければ大変なことになりますね。その働きの一つが細胞からの排泄トランスポーターであり、P糖蛋白(P-Glycoprotein:膜蛋白質)が担っております。

これは人の様々な臓器、肝臓・胆管・腎臓・小腸・脳の毛細管内皮細胞・妊娠中の胎盤などの細胞膜に存在する蛋白で、薬物の体内動態には深く関与しております。
その他に、MRP(MultidrugResistanceProtein)という輸送蛋白も薬物排泄に関与しており、MRP1(体内に広く分布)やMRP2(肝臓・腎臓・消化管に多い)が知られております。


有機アニオントランスポーティングポリペプチドド(OATPs:これにもさまざまなサブタイプがあり、OATP1A2、OATP1B1、OATP1B3、OATP2B1など)は、細胞外から細胞内に薬剤を取り込む働きを持つ薬物トランスポーターの一つです。
これが、消化管粘膜上皮細胞の管腔側(食物の通過する側)膜上(1)や肝細胞の血液側膜上(2)に存在します。
OATPsの基質となる薬剤を同時に服用した時、(1)のときと(2)のときではまったく逆の作用を及ぼすことになります。
(1)のときには、両方の薬剤が同じOATPsの基質となるため血液側への通過が阻害されることにより、薬剤の効果が減弱する可能性があり、(2)のときには、逆に、血液側から細胞への通過が阻害され、血中濃度が上がり薬剤の効果が増大する可能性がある。

例えば一部の果実ジュースは消化管粘膜上皮細胞の管腔側膜上にあるOATPsを強力に阻害し、OATPsの基質となる薬剤(例えば塩酸フェキソフェナジンなど)の吸収が大きく抑制されます。この結果、薬剤の血中濃度が上がらず効果が期待できない。(OATPsの基質とならない薬剤は問題ありませんが)

ところが、例えば免疫抑制剤のシクロスポリンは、肝細胞の血液側膜上にあるOATP1B1を阻害し、今度は逆に血管側から細胞側へのトランスポートが阻害される為、OATP1B1の基質となる薬剤(スタチン系など)の血中濃度が増大してしまう。

ところが話は単純ではない場合もあるようで、例えばジゴキシン(ジゴシンほか)やグリペンクラミド(オイグルコンほか)の血中濃度は、GFJ(グレープフルーツジュース)と併用しても不変だという報告がある。
これは、実は、(1)で吸収阻害が起こり、(2)で血中濃度増大(血管からの排泄減少)ということが起きており+-で結果0ということになるらしい。

●次に・・・本題の「お薬は人により効き目が異なる」というお話

薬を吸収・分布・排泄過程を経て体外へ排出させるような酵素蛋白に関連する遺伝子を、薬物動態遺伝子といいます。

この薬物代謝に関連する酵素は、この他にも数多く存在しますが、その蛋白遺伝子多型の同定・頻度解析がデータベースとして現在進行中です。

この情報は、日本人ボランティア1000人のインフォームド・コンセントにより採血されたDNA情報(DNA連結不可により匿名化されている)をもとにされております。

このデータベースにより薬物動態関連遺伝子の解析が可能となっているようです。

これが将来の医療となるかもしれない(夢のような話ですが)「個の医療」といわれる由縁なのです。

遺伝子多型でお薬を匙かげんするなんてことに。
実際、将来的に、医薬品の添付文書には遺伝子多型の情報が記載されると聞きました。。。

人のDNAの塩基配列は個人個人でわずかにA-G・C-Tの1塩基ペアが置き換わっているそうです。これをスニップ(SNP:SingleNucleotidePolymorphisms)といい、数百万ヵ所あるのでスニップス(SNPs:1塩基多型)となります。このSNPsがお薬の効きやすさ・副作用の出やすさ・病気の治りやすさに関連していると考えられているわけです。

薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)に変異型の遺伝子を持っている人は(これを遺伝的な多型性geneticpolymorphismといい、異なる表現型を示す個体が1%以上の頻度であることをいいます。)正常な機能を持つ代謝酵素が産生されない為、代謝が遅れ薬剤の血中濃度が高くなります。この人は良く言えば「薬がよく効く人」とも言えますが、悪く言えば副作用の出る人でもあります。

多型性で、薬物代謝酵素のアレルの変異型がヘテロ接合体の場合には代謝活性は正常人よりやや劣りIntermediateMetabolizer(IM)といい、ホモ接合体ならばPoorMetabolizer(PM)と呼ばれております。また、代謝活性(代謝能)が通常より高い場合をExtensiveMetabolizer(EM)と呼び、CYP2D6に限ってはEMより高いUltrarapidMetabolizer(UM)の存在も確認されております。

このPM、IM、正常人を平均してしまっているのが、現在の薬剤の常用量となってしまっているわけです。だから私にとても良く効く薬はあなたに効くとは限らないのです。

例えば、CYP2C19(薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)のサブタイプには何種も存在する)のPMは、日本人では5人に1人だそうです。(このPMの70%は、CYP2C19*2という変異遺伝子で説明できているそうです。野性型以外のCYPは、・・*1以外のように命名します。)
そしてヘテロ接合体、つまりIMは30~40%で残りが正常、これが欧米人ですと、CYP2C19のPMは極めて少なく数パーセントだそうです。
CYP2C9のホモ接合体は日本人で2500人に1人、ヘテロ接合体は25人に1人だそうです。

CYP2D6のPMは日本人で1%未満、欧米人では5~10%いるそうです。
(野性型CYP2D6以外の変異体でPMに関係する変異遺伝子は現在20種類ほど報告されていますが、PM頻度が日本人は低いということですね。)

このようにお薬の効き目や相互作用にはとんでもない人種差が存在していたわけです。

そして、仮にある薬剤が一つのCYP2C19でほとんどの代謝が行われてしまうようだと、そんな遺伝子多型に左右されるお薬は開発中止となり世の中には出て来ないという事になるそうです。

-参考文献-
薬物相互作用トップ100(医歯薬出版)訳者代表:菅家甫子
飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用(じほう)
薬局(南山堂)1999、vol.50p.2130千葉寛
薬局(南山堂)2001、vol.52No.2p.1053
日経ドラッグインフォメーション(日経BP(社))2008.4.126号p50
細胞増大号特集チトクロームP450遺伝子多型(ニュー・サイエンス(社))2001.11

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